脱力生活くらぶ

50代専業主婦 ゆるく生きてゆく

タケノコ売り場のおじいさんが心配

人との距離感は、育った環境や性格で、それぞれ大きく違うと思いますが、私が育った大阪は、知らない人とでも平気で話をする人がたくさんいました。

母はスーパーのイカナゴ売り場で一緒になった見知らぬ奥様から、イカナゴの釘煮の作り方を教わって帰ってきた。最後はこうやって鍋をあおるんだと、ゼスチャー付きだった。

私も、バスで隣に座った見知らぬおばあちゃんから飴ちゃんを貰ったことがある。隣に座っているのに、自分だけ食べるのが悪いと思って私にもくれたのだった。

昨年、大阪に帰省してバスに乗った時、最初は座っていましたが、おばあさんに席を譲るために立ちました。

しばらくすると、私の背中をトントンたたく女性がいます。

「こっち空いたよ」そう言って私を呼んでくれました。もちろん知らない人です。降りた人がいたので、空いた席に私を座らせようと呼んでくれたのです。

大阪やわぁと思いました。

今、私が住んでいる東海地方は、初対面の人と愛想よく話をする地域ではありません。仲良くなれば愛想の良い人ばかりですが、知らない間は、そこそこの距離感が必要なようです。

今まではそう思っていましたが、先日、野菜売り場でタケノコを吟味していましたら、知らないおじいさんが私に話しかけてきました。

「こっちの大きいほうがいいわ、それだと皮むいたら、こんくらい小さくなるで」

なぜだか私は嬉しくなった。ここにもこんな人がいるのかと思って。

でも、タケノコは大きくなくていいのよ。タケノコご飯にするだけだから、私が持ってるサイズでも、2回分は十分あるし。

だから嬉しいけど言うとおりにしない。

そしたら次は、「先の黄色いのにしたらいい」と教えてくれた。黄色いってことは、土の中に先が隠れてたってことだから柔らかいんですって。

「じゃあ、これにしようかな」と言っておすすめのタケノコを手に取る。

おじいさんは物知りです、次はアク抜きについて話します。

「こんな米ぬかじゃあ、アク抜きは出来んわ」そう言って自分のスマホの中の写真を探します。

「あったあった、これだ」

そう言って私に見せてくれたのは、ダイソーで売っているセスキ炭酸ソーダのスプレーボトルでした。

「これでアク抜きしたらいい」とおじいさん。自分はこれでやるんだと言って、添付の米ぬかを、売り場にぽいっと捨てました。

「これ(セスキ炭酸ソーダ)でばっちりだ」と。

ええ、ばっちりなのは私も知ってる。台所の油汚れもばっちり取れるもの。

セスキ炭酸ソーダ。その掃除用でいいのかしら?重曹と間違えてない?

そう思いましたが、「へぇ、そうなんですか、知りませんでした」と返事した。

家に帰って調べてみてわかりました。セスキ炭酸ソーダは料理に使うには危険なものだった。

何でも食品用でないものは良くない。良くないどころか体に悪い。

「あら、アク抜きは重曹じゃないですか?」と一言聞くべきだったのに。

私ったらバカバカ。

おじいさんが心配だ。家族が止めてくれてたらいいけど。

どうか無事でありますように。元気にタケノコを食べてて欲しい。