脱力生活くらぶ

50代専業主婦 ゆるく生きてゆく

噛まれたかったり噛まれたくなかったり

「獅子舞に頭を噛まれる」が噛まれる界のトップだとすれば、「お風呂のイスにおしりを噛まれる」はどの辺りに位置するのだろうか。

何を隠そう、私は噛まれた側の人間だ。

獅子舞ではなく、イスのほうなのが残念だが事実である。

人に言わないほうがいい話なのかもしれない。と思いつつ、優しいお友達に打ち明けたことがあるが、返す言葉を選ぶのに苦労させた覚えがある。

彼女には悪いことをしてしまった。

それにしても、入浴時になぜ突然痛みが走るのかわからなかった。変な座りかたをしていたのかな?くらいに思っていた。

突然やってくる痛みにビクビクしながらお風呂に入る私。

イスにヒビが入っていることに気がついたのは、しばらく経ってからだった。

イスが私を噛んでいたのだ。許せない。

「お風呂のイスにずっとおしり噛まれてたわ。さっき気がついた。みんなも噛まれてたやろ?痛いよなー」と私。

「ぼく噛まれてへんで」と息子。

「ぼくも噛まれてへん」と夫。

誰も噛まれてはいなかった。

そして妙な空気が流れる。

あなたひとり噛まれてお気の毒ね的な空気だ。

「うそやん、ほんまは噛まれてたよな?」と私。食い下がる。そうであって欲しかった。

「噛まれてへんで」と2人。

イスめ、許さない。私はすぐに新品に取り替えた。

 

子どもの頃、年が明けてしばらくすると、家に獅子舞がやってきた。

ピーヒャラピーヒャラ笛を吹く人、獅子舞を踊る人(頭係と胴体係)がいて、玄関でしばらく踊った後、必ず祖母の頭を噛んだ。

祖母は獅子舞に噛んでもらいたい人だった。

噛んでもらうと学力の向上や無病息災、健やかな成長に繋がると言われているが、祖母に効き目があったかは聞いたことがないのでわからない。聞けばよかったな。

私は「噛んでもらい」と毎年言われたが、毎年断った。獅子舞の顔が怖すぎて。

でも、今となっては噛んでもらっておけば良かったと思う。

噛まれる界のトップの獅子舞に噛んでもらった自分なら、ひとりだけイスに噛まれようともへっちゃらに違いない。