脱力生活くらぶ

50代専業主婦 ゆるく生きてゆく

雰囲気に呑まれる

相手の自信満々な雰囲気に呑まれることがあります。人でもお店でもそうです。

前回、息子のアパート探しで大阪に帰った時、友達と行ったお店がそれだった。老舗の和菓子屋さんで、TV番組でも紹介されるほどの有名店だから、なかなか予約が取れないとのこと。和菓子屋さんで予約って何よと思いつつも、せっかく友達が予約を取ってくれたので、ありがたい気持ちでお店に向かう。

門にしめ縄。しめ縄。2回言ってしまったが、もうすでに謎のありがたさが増している。

綺麗に手入れされた和風なお庭を見つつ、喫茶コーナーへ進む。

店内はおしゃれなバーのようだった。とても和菓子屋さんとは思えない雰囲気だ。ライティングもやや落とし気味で、音楽もジャズがかかっている。

おしゃれ空間…。これはおしゃれカップルのためのお店に違いない。現に隣の席には若いおしゃれカップルがいい雰囲気で座っている。おばちゃん達7人で来るところではないと5秒で悟る。

店員のお嬢さんが注文を聞きに来てくれたが、服装が変わっている。

若いお嬢さんたちが、和菓子職人が着る白い上下を着て(職人帽子付き)いる。店の雰囲気が洋に振り切っていたのに、和菓子職人コスチューム。あえての和だ。

結局どないしたいねーん。あ、心の声です。

それに彼女達はホンモノの和菓子職人ではないと思う。綺麗すぎて違う。

みたらしが有名なので、みたらしのセットを注文しましたが、器がまた凝りに凝っていた。小さな炊飯土鍋のような器に、小さなみたらしが3本入っているのですが、タレの温かさを保つためにティーウォーマーのようなロウソクが点けられている。こんなに過保護なみたらしは生まれて初めてだった。タレ、別に冷めてもいいけどね。

言われるがままにお茶も入れた。私たちは驚くほどに従順だった。

「まず、そちらの茶筒(1人サイズ)を手に取ってください」「蓋を開けてください」

「茶葉を全部急須に入れてください」「お湯を急須の半分まで入れてください」

ちゃんと言うことをきく私たち。そうこうしている間に飲み頃の30秒が経つ。

「お茶を全部湯呑に入れてください」

言われるがままにお茶を入れた。説明は必要ないほど普通過ぎることなのに。

自信満々な店側に呑まれている…。相手のペースで時間が進む。

そして、みたらしのセットに1800円を払い、90分で帰らされた。

「みたらしは喜八洲やろー」

あの日言えなかった言葉を今、大声で言ってみた。あぁ、スッキリした。