脱力生活くらぶ

50代専業主婦 ゆるく生きてゆく

コノママイキマス…?

息子の誕生日が近づくこの頃になると、恐ろしい思い出がよみがえる。麻酔の効いていない帝王切開手術です。

稀にみるへっぽこ妊婦だった私は、妊娠期間の半分を入院し、8ヶ月目に帝王切開で出産することになりました。

地元の病院だったので、手術室の看護師さんが中学の部活の後輩だったりして、とても恥ずかしい思いをしました。

「先輩!お久しぶりです!Fです!」と彼女が笑顔で声をかけてくれた時は、私はお腹をさっくり切られる前の、黄色い液体をぬりぬり塗られている最中でした。

世の奥様は「友達でも冷蔵庫の中身を見られるなんて絶対に嫌よねー。勝手に開けるのやめて欲しいわー」なんてことを言うけれど、お腹の中を見られるよりずっとマシだと思う。気が済むまで見せてあげてはどうかしら?

手術もFさんにとっては日常なんだろうな、すごいな。看護師さんになったんだな…としみじみしていたら、「先生、私の先輩なんですっ」と先生たちにも紹介してくれたりして。BGMが流れる手術室は思いのほかリラックスムードでした。

私の主治医は産婦人科のいちばん偉い先生で、先生のもとには勉強中の若いフレッシュな先生がいました。

偉い先生は、フレッシュな先生に麻酔の注射を打たせます。背骨のどのあたりに打つか教えています。でも、効くはずの麻酔が効かない。

「足をパタパタしてみてください」と言われてパタパタ出来る。なんか変な空気になる手術室。

「もう1本打ちましょう」となる。

2本目を打つ。パタパタ出来る。パタパタ出来るどころか、足の指でグリーンピースだってつまめたと思う。

そして、麻酔が全く効いていない不安な妊婦に偉い先生は言いました。

「赤ちゃんが眠ってしまうので、これ以上は打てません。このままいきます」

コノママイキマス……

信じられないお言葉をいただき、手術は始まりました。よく気を失わずにいられたものだと思う。母は強いのである。

麻酔は効いていなかったけど、お腹の縫い目も綺麗じゃないけど、産ませてもらえて感謝しかありませんでした。

ありがとうフレッシュ先生。ありがとう神様仏様ご先祖さま。

布に巻かれた小さな小さな赤ちゃんは、すごいスピードでどこかに連れて行かれたけれど、とても白くて可愛かった。

人生でいちばん痛かった日であり、人生でいちばん嬉しかった日でもある。

こんな息子と私は、あの帝王切開Tシャツを、大きな顔をして着てもいいと思うんですよね。

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