まだまだ暑い夏、電車に乗り込んでくるお嬢さんたちの手には、小さな扇風機が握りしめられている。
パステルカラーの可愛い見た目のわりに風量もちゃんとあり、顔に向けた扇風機の風で髪がフワフワなびいています。
するとどうでしょう、あっという間に車内が甘い香りで満たされたのです。
あらぁ、お花畑にいるみたい。
甘い香りに包まれながら、私はちょっとだけ得をしたような気がした。
お寺でお線香の煙を自分に向けて手繰り寄せるように、若いお嬢さんたちの甘い風を浴びようではないか。何かしらの御利益があるに違いない。
そんなことを考えながら、私はMちゃんに会うために名古屋駅に向かうのでした。
Mちゃんは幼なじみ。私たちはバッテリーだった。
今回は、ランチをするためだけに、はるばる大阪から来てくれるという。子どもの受験が終わって、ひと段落ついたからだそう。
久しぶりなので話すことがいっぱいあります。まずは喫茶店へ。
日本はいい国ですよね。かわいい店員さんがさっそくお水を持ってきてくれました。
私たちは見事な一気飲みをキメたのですが、Mちゃんは、すぐさま水をおかわりしたいと言って店員さんを目で追っています。
「オーダーする前に水のおかわりするの、ちょっと恥ずかしくない?」と言ってみましたが、もっと水が飲みたいんだとごねるMちゃん。勢いがあります。
そして、おかわりを申し出る。こんな喉カラカラのおばちゃん達にも優しく対応してくれる水の妖精。彼女に幸あれ。
水を飲んで生き返った後、「ケーキは飲み物やで」と、個性的な持論を展開するMちゃん。そう言って私にケーキを飲んで見せます。
「わー、すごーい」とは当然ならない。落ち着こうぜ、Mちゃん!私たちはもう大人過ぎるくらい大人なんだから。
「ケーキは飲み物やで」「いや、ケーキは食べ物やって」と、しばし小競り合う。
時間とお金をかけて大阪から来てくれたというのに、何だこのどうでもいい話は。
始終くだらない話しかしてないけれど、でもそれが面白くて、時々むせて(老い)笑った。
「また来てな」と言う私に、「次は冬やな」と言って、Mちゃんは帰って行きました。
来てくれてありがとう。変わらず元気でいてくれて嬉しかった。あぁ、楽しい一日だった。
水の妖精(イメージ)
ケーキは飲み物か食べ物か、聞いてみればよかったな。